由加山と神無月
出雲神話は農民の間に根強い信仰を集めてきた。一般に10月を神無月と呼ぶのは、全国の神々がこの月に出雲に集まるため、その間、各地を留守にするからだといわれる。それで、出雲ではかえって、神在月だともいわれている。この神は集って、人々の縁組みを定めるのだといわれている。
こうした話は、昔から児島あたりにもあって、神無月にはすべての神様は金毘羅様に集った。ところが、由加の神さまだけは金毘羅様に行かなかった。すると金毘羅様から使いの者が来て、「どうして来ないのか」と来ない理由をたずねた。
そこで由加の神さまは「忙しくて行けんのじゃ」と答えた。すると使いの者は「それでは、どれほど忙しいのか一度見に行くから、一年中で一番ひまな日を教えて欲しい」といった。そこで由加の神様は、祭りの日を教えた。その日に金毘羅様がやって来てみると参拝者で押すな押すなの大盛況である。
「これでは、忙しくてとても来られない筈だわい」と由加の神様を許したという。
「玉野の伝説」
著者:河井康夫
発行:昭和53年
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