怪猫と堂所の墓
これは八浜の金剛寺に伝わる話である。
昔、この寺の近くの墓地に、新しい死人の埋葬があると必ず墓があばかれ、何者かによって中が荒されるという事件がたびたび起こり、村人たちはこの気味悪い事件に恐れ、寄るとさわると、この話でもちきりであった。
ちょうどその頃、金剛寺に有名な僧がいてこの様子を確かめようと思い、ある夜、ひそかに墓地に出かけたのである。物陰にかくれて、しばらく見ていたが、やがて真夜中になると新しい墓地のあたりで何者か動く気配がした。そっと近づいてみると、大きな猫らしいものが、しきりに前脚で土を掘っているではないか。そこで、この僧は静かに目を閉じ、法号を唱え、法力を祈りながら持っていた数珠ではっしとばかり猫を打った。
その法力により不思議や猫は一撃のもとに死んだのである。夜が明けると、この話はたちまち村中に知れわたった。みんなが墓地に来てみると、そのはまるで怪物のような大きな猫であった。
それ以来、この不気味な墓あばきは後を絶ったのである。八浜の人達は、あらためて、この僧の高い徳と法力の偉大さに感銘し、ますます尊敬の念を深めたということである。
そしてこの墓地は、今も「堂所の墓地」と呼ばれている。この猫に似た怪物の話は「猫のひそひそ話という伝説で甲浦の円蔵院にも伝わっている。
「玉野の伝説」
著者:河井康夫
発行:昭和53年
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