岡山県玉野市に伝わる社寺にまつわる伝説

俊寛僧都と十一面観音像

日比観音院の縁起によると、ここに弘法大師の作による十一面観音菩薩の像がある。俊寛僧都は常にこの観音像を崇尊した。ある時、航行していたところ台風がきて激しい波が船辺りをたたき、その尊像は海中に入って風雨を静めて俊寛僧都を救った。こうして、この尊像は数日して、現在の羽根崎あたりの浜に流れ着いた。

 

この像は光り輝いて人々の目を射た。 村人はこれを現在の観音院におさめて本尊にしたという。

 

日比観音院のあるところは以前、天神山西福寺医光院といった。毎年正月17日に会陽式を修行し、周辺の信者を集めて繁盛したが、一時仏法がすたれて、寺はみるかげもなく衰えた。この不幸な時に、郷里の井戸の底で光を放つものがあった。取り出すと観音像であった。村人はこれをそのままにしておくにしのびず、寛正年中に小さなお堂を建てて、安置した。これが現在の観音院、正しくは与楽山常光寺観音院となった。その後、元禄二年、行円僧都の発願によって、立派な寺院を設けて今の地に移したものであるという。

 

「玉野の伝説」

著者:河井康夫

発行:昭和53年

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